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データが消失する原因と対処法 ~ファイルサーバーのバックアップ ~

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データが消失する原因と対処法

ビジネスで扱っているパソコンや社内のファイルサーバから、ある日突然データが消失し、重要な情報を取り出せなくなる……。あまり考えたくないことですが、実際にデータが消失する危険性は日頃の作業の中に常に潜んでいます。データの消失を防ぐ、あるいは消失したデータを復旧するには、データ消失の原因と正しい対処法を知る必要があります。データの消失について知っておくべきポイントを解説していきます。

データが消失する3つの原因

データの消失はなぜ起こるのか、その原因から見ていきましょう。主に次の3つの原因が考えられます。

人的ミス

人的ミスは、データ消失の原因の中でもかなり高い割合を占めています。不注意によって重要なファイルやフォルダを削除してしまった、データを上書きしてしまったというミスは多くの企業で見られるものです。また操作を間違えてハードディスクをフォーマットしてしまうようなケースもあります。

当然、重要なデータに関してはバックアップを取っているはずですが、いざ復旧しようとするとバックアップがしっかり取れていなかったという事実が明らかになることもあります。バックアップ用バッチファイルを逆に実行して、現行のデータがバックアップデータに同期されてしまうケースも人的ミスです。

ハードウェアの破損

人的ミスと並ぶ、あるいはもっと多い原因がハードウェアの破損や障害です。とくにハードディスクドライブ(HDD)には論理障害や物理障害などのトラブルが生じる可能性があります。

論理障害の多くは人的ミスで起こるのですが、物理障害は経年劣化、熱、水没、落下・振動などが原因で起こります。不良セクタの発生、磁気ヘッドやメディアの損傷、データ部の破損などが物理障害の症状で、これらが重複した障害の場合は復旧作業も難しくなります。

サーバーなどに使用するハードディスクは多くの場合、複数のHDDを一つのドライブのように認識・表示させて安全性を高めるRAID(レイド)を組んでいるでしょう。しかし、複数のHDDが同時に故障した、エラーが出たHDDを交換してリビルドを行う途中で故障していなかったはずのHDDにも障害が起きたというトラブルが起きる可能性もあります。この場合、RAIDが崩壊して復旧は難しくなってしまいます。

ソフトウェアのトラブル

データ消失の原因の大半は人的ミスとハードウェアの破損によるものといえますが、この2つに次いで多いのがソフトウェアに起因するトラブルです。

ソフトウェアの不具合によってマシンがフリーズし、強制シャットダウンした結果、再起動後にファイルが損傷していて開けなくなるケースなどがこれに該当します。他にOSやファームウェアのアップデートの失敗、エラーが起きているときにユーティリティソフトなどでデータ復旧を試みることによってかえってもとのデータを破損させてしまうというケースもあります。

データが消失したときの対処法1:バックアップから復旧

対処法として最も有効なのはバックアップからの復旧です。まず、失うと困るデータは必ずバックアップを取っておくことが、言うまでもなく重要です。そしてバックアップがしっかり取れているかを毎回チェックすべきです。

バックアップには外付けHDDや光学メディア、テープメディアなどに保存する方法、クラウド上に保存する方法、LAN環境に接続したNASに保存する方法などがあります。

データが消失したときの対処法2:業者に相談

ハードウェアが破損している場合は、メーカーやデータ復旧業者に問い合わせるのがベターな選択となります。HDDから異音がする、焦げ臭いなどの異臭がする、モーターが回っていないなどの状況が確認できたら、HDDに物理障害が起きている可能性が高いでしょう。

その際は、市販のユーティリティソフトなどを使うことは極力避け、業者に一任してしまった方が賢明です。また復旧業者に依頼する場合は事前に状況をよく説明し、データを復旧できる見込みがあるかどうか確認してください。そのときの対応によって、その業者の得意分野や技術力が推し量れるはずです。例えばクライアントPCとサーバーではデータの復旧の仕方も違ってきます。

ただし、メーカーや復旧業者に依頼したからといって必ずデータが復元できるとは限りません。データは消えたままで、機器もリプレースが必要になるケースもあることは覚悟しておきましょう。

トラブルに備えて定期的なバックアップの徹底を

バックアップは確実に行うことに加えて、定期的に行うことが必要です。毎日バックアップを行えば、たとえデータが消失しても前日の状態に戻すことが可能で、その分、被害を小さく抑えることができます。

その意味では、確実性が高く、小まめなバックアップが苦にならないようなバックアップソフトやバックアップツールを選ぶことが、最も重要と言えるかもしれません。

データ消失は思わぬときに発生します。定期的なバックアップを欠かさず、常に万一のときのことを想定した備えをしておきましょう。日頃からバックアップに慣れ親しんでおく、というくらいの感覚でデータと付き合うことが肝要です。

何に注意すればいい? ファイルサーバーのバックアップ

ファイルサーバーのバックアップには、十分な注意を払っておくことが必要です。必要といわれて一応バックアップは取ってある……というレベルでは、必要なときに完全なデータの復旧・復元が望めない可能性もあります。ファイルサーバーのバックアップについて注意点などをまとめます。

業務を止めない! バックアップの重要性

ファイルサーバーのバックアップは必要な理由として、大きなものを3つ挙げます。

1つ目の理由は、操作ミスや不注意、不慣れなどのヒューマンエラーによってデータ(ファイル)が消失してしまうことがあるからです。

2つ目の理由はハードウェアが故障・不具合を起こした場合に備えるためです。サーバーに障害が起きてもバックアップがあれば復旧が可能です。

3つ目の理由は大規模災害などの緊急事態に遭遇したときに事業を継続するためです。事業継続計画(BCP)を実現する手段の一つとして、ファイルサーバーのバックアップは重要です。

この3つの他にも、さまざまな理由があります。ソフトウェア障害、ウイルス感染、不正侵入などによるリスクも考えられます。

ファイルサーバーはネットワーク上でデータを共有し、データのバックアップや一元管理のために有効な方法です。しかし、ファイルサーバーへの依存度が強いほど、サーバーに障害が起きたときに業務が停止してしまうリスクは高くなります。さらにハードディスクは振動に弱く、もともと壊れやすい装置でもあります。

このような理由から、ファイルサーバーのバックアップは必要不可欠なものといえるのです。

さまざまなバックアップ方法

ファイルサーバーのバックアップ方法には次のようなものがあります。

テープによるバックアップ

LTOなどの磁気テープを利用したバックアップ方法です。ハードディスクと違ってテープは故障するリスクが少なく、可搬性が高いので社外での保管も可能です。一方、テープの交換作業などは手動で行う必要があります。またデータをファイル単位でリストア(復元)したい、数年前のデータを確認したいなどの場合は、操作性の悪さや取り扱いの面倒さがあります。

ハードディスクによるバックアップ

外付けハードディスクを使用したバックアップ方法です。サーバーにハードディスクを接続し、バックアップソフトを使用することで自動的にバックアップ作業を実行できます。また、NAS(ネットワークHDD)を使ったバックアップも可能です。ただし、ハードディスクをサーバーと同じ場所・建物内に置くと災害などの際、同時に使用不可能になることがあります。

遠隔地バックアップ

遠隔地にバックアップデータを保管する方法は、従来はテープメディアを使用し、物理的に搬送する方法が一般的でした。現在はハードディスクやサーバーを遠隔地に設置し、通信回線を経由してバックアップするリモートバックアップや、クラウドにバックアップを取る方法などが登場しています。

なお、遠隔地や同じネットワーク内のサーバー、NASなどに更新データをリアルタイムで同期させる方法はレプリケーションと呼ばれます。レプリケーションは複製元のサーバーが停止しても複製先のデータを使って迅速に業務が再開できるメリットがありますが、従来のバックアップと異なり、数世代前のデータを保持することはできません。

ファイルサーバーのバックアップにおけるポイント

まず、頻繁に更新されるホットデータがある場合は、1日1回以上のバックアップが必要です。バックアップ頻度は、データの鮮度がどの程度重要なのかによって決まります。

また、バックアップは世代管理できることが基本です。最新のバックアップ時点の復旧だけではなく、数世代前のバックアップ時点にも戻れることで、例えばウイルス感染した場合でも感染するより前の状態に戻すことができます。

バックアップの注意点

注意点としては、バックアップを行ったときには必ずバックアップログでコピーに失敗したファイルがないかを確認することが挙げられます。これを怠ると、次回のバックアップ時にエラーがそのまま引き継がれてしまう可能性があります。エラーが出た場合にアラートが表示されるような設定にしておくとよいでしょう。

さらに世代管理が機能しているか、バックアップデータから任意のデータをファイル単位やフォルダ単位で取り出したりリストアしたりできるかも定期的にチェックしておきましょう。

またバックアップした媒体を適切に保管・管理し、損傷や紛失、盗難から守ることにも注意しなければなりません。同時に、媒体の耐用年数にも気を配る必要があります。

バックアップに時間がかかりすぎる場合の対処法

バックアップの方式には、毎回すべてのデータをバックアップする「完全バックアップ」、初回フルバックアップから変更・追加されたデータのみをバックアップする「差分バックアップ」、前回行われたバックアップから変更・追加されたデータのみをバックアップする「増分バックアップ」があります。

フルバックアップはデータ量が膨大になるほどバックアップ作業時間が長くなり、元データ量×世代分の容量が必要になります。しかしデータの全復元は1回の作業で可能です。

差分バックアップと増分バックアップはどちらもバックアップ作業時間を短縮できます。しかし増分バックアップはリストアに時間を要し、差分バックアップは増分バックアップに比べてバックアップを繰り返すほどバックアップ作業時間が長くなって必要な空き容量も多くなります。

そこで多くの企業では、フルバックアップと増分バックアップ、差分バックアップを組み合わせた運用方法を採用しています。週次でフルバックアップを行い、毎日のバックアップはファイルやブロック単位で差分バックアップで行うなどの方法にすれば、時間と安全性のバランスが取れるでしょう。

何らかのミスやトラブルが発生したとき、企業の資産となるデータを守れるよう、ファイルサーバーのバックアップ管理を怠らないようにしましょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム