導入事例
名古屋市消防局
閉域環境でも必要な情報へ安全にアクセス
現場判断を支える情報活用基盤が消防DXを推進
名古屋市消防局は、愛知県名古屋市の消防、救急、および防災業務を担う名古屋市直轄の組織です。1948年3月に設置され、消防吏員数は2,443人(2026年4月1日現在)で、16消防署、44出張所、本部機動部隊、消防航空隊、消防学校で構成されています。名古屋市内の16区を管轄区域とし、24時間365日体制で火災の消火、人命救助、救急搬送を実施し、火災予防、防災訓練指導を行うほか、大規模化、多様化する災害に迅速に対応するなど、230万人を超える名古屋市民の命と生活を守るための活動に取り組んでいます。
課題
- 閉域ネットワークのためインターネット参照ができない
- 現場到着前に必要な情報を十分に確認できない
- 安全性を維持しながら情報活用を実現する必要があった
導入効果
- 閉域ネットワークを維持したまま外部情報の参照が可能に
- 出動中に地図や周辺情報を確認でき、状況把握の幅が拡大
- 端末に情報を残さず安全性を確保、直感的操作で現場に定着
名古屋市消防局 様 イメージ図

119番の先にある“数分間”をどう支えるか
119番通報を受けた瞬間から、消防・救急の現場は動き出す。出動から現場到着までのわずかな時間に、どれだけ状況を把握できるかが、その後の現場判断を左右する。
名古屋市消防局では、防災指令センターを中心に指令管制システムを運用し、通報内容や位置情報を消防車・救急車に搭載されたタブレット端末へ即時共有している。隊員はそれらの情報をもとに現場へ向かい、活動準備を進める。

「指令の共同運用を開始した令和7年度より、名古屋市、海部地方及び瀬戸尾張旭地方からの119番通報はすべて、名古屋市役所内の『防災指令センター』につながります。通報内容から火災や事故の発生場所を迅速かつ正確に把握し、いち早く消防車や救急車を到着させるための出動指示を出すことが、重要な役割です」と、名古屋市 消防局 消防部指令課(情報システム担当)の加藤 亮太氏は説明する。
現場到着前の数分間は、単なる移動時間ではない。限られた時間の中で、周辺環境の把握や活動方針の共有を行う重要な準備時間である。特に近年は災害の多様化・複雑化が進み、より正確で多角的な情報を迅速に得ることの重要性が高まっている。
そうした運用の中で、安全性を確保しながら情報をどのように活用するかが課題となっていた。
閉域網という前提の中で生じていた課題
指令管制システムは、情報漏えいや不正アクセスを防ぐため閉域ネットワークで稼働している。高い安全性を維持するために不可欠な構成だ。
一方、現場では到着前に詳細な地図を確認したい場合や、特殊事案に関する情報を把握したい場面、周辺環境を事前に確認したいケースなどがある。例えば、初めて出動する地域の細かな道路状況や建物の構造、危険物取扱施設の位置関係など、事前に確認できる情報は多い。こうした情報を到着前に把握できるかどうかは、安全確保や活動効率に直結する。
しかし、閉域環境ではインターネットに直接接続できないため、必要な情報にすぐにアクセスできないという制約があった。
「閉域環境の前提を崩さずに外部からの情報をどう扱うかは、以前から重要な検討テーマでした」と、加藤氏は語る。
安全性と利便性。その両立が求められていた。
閉域を維持しながらインターネット参照を可能に
名古屋市消防局では、指令管制システムの更新に向けて入札を実施し、日本電気株式会社(NEC)のシステムを採用した。更新にあたっては、「インターネットによる情報参照」と「十分なセキュリティ対策」の両立が重要な要件となった。
そこでNECは、消防業務の運用特性を踏まえ、ソリトンシステムズのSoliton SecureBrowser(以下、SecureBrowser)とSoliton SecureGateway(以下、SecureGateway)を組み合わせた構成を提案した。
「閉域環境を維持しながら安全にインターネットへ接続できることを重視しました。SecureBrowserにより端末側にデータを残さず閲覧できること、SecureGatewayによって閉域網との境界を適切に制御できる構成であることが重要でした。加えて、現場の運用に無理なく組み込めることも大切な要件でした」と、日本電気株式会社 インフラDX事業部門 ファイアレスキュー統括部 第一消防指令システムグループ プロジェクトマネージャーの田中 雅弥氏は説明する。

新たな構成は、専用アプライアンスとして提供される方式であったため、既存ネットワークの大幅な変更を伴わずに導入できる点も評価された。
「いかに安全性を保ちながら情報活用を促進していくか。その観点で現実的な提案だったと感じています。この仕組みによって、現場到着前の状況把握の幅は大きく広がりました」と、加藤氏は語る。
NECは、指令管制システムで取得した緯度経度情報を地図URLに自動付加する仕組みも整備した。これにより、隊員は到着前に現場位置を地図上で直感的に確認できるようになっている。
現場での“違和感のなさ”が定着を支える
技術的な仕組み以上に重視されたのが、現場での使いやすさだった。
SecureBrowserは、タブレット上のアイコンから起動することができ、操作感も一般的なブラウザと大きく変わらない。特別な教育や研修を行うことなく実運用に馴染んだ。
複雑な手順や追加作業が発生すると、現場での定着は難しくなる。日々の業務負荷を増やさないことが、継続利用の条件だ。その点、今回の仕組みは現場との親和性が高かった。
「特別な意識をせずに利用できています。端末に情報が残らないことも安心材料の一つですね。現場での情報確認が行いやすくなりました」と、加藤氏は話す。派手な変化ではない。しかし、業務の中で違和感なく使い続けられることが、現場定着の鍵となっている。
今回の取り組みは、閉域環境下での情報の扱い方について、改めて検討するきっかけとなった。
安全性を前提とした情報活用のこれから
将来的には、AIを活用した通報内容のリアルタイム文字変換や、現場状況の映像共有など、指令管制業務におけるITのさらなる高度化も想定される。そうした取り組みを見据えながら、安全性を前提とした情報基盤の整備はさらに重要性を増していく。
「セキュリティを維持しながら必要な情報を活用することは、これからも継続して考えたいテーマです。現場に無理のない形で、災害対応や救命活動に役立つ情報環境を整えていきたい」と、加藤氏は今後を見据える。
閉域ネットワークという前提を守りながら必要な情報を確実に届ける。その取り組みは、これからも続いていく。
お忙しい中、有り難うございました。
※本ページの内容は、2026年5月作成時の情報に基づいています。